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映画「映像の発見---松本俊夫の時代」 [感想文]

5月1日2日、シアター・イメージフォーラムにて、「映像の発見---松本俊夫の時代 第1部・記録映画篇 第2部・拡張映画篇 第3部・劇映画篇 第4部・実験映画篇」が、監督のトークショー付きで上映された。
記録映画・実験映画・拡張映画・劇映画と あらゆるジャンルで日本の映像界のトップを担ってきた映像作家・松本俊夫氏の軌跡を、松本氏ご本人や関わりの深かった人物へのインタビューと松本作品本編の引用で構成したドキュメンタリーで、539分に渡る壮大な作品である。 監督は筒井武文氏。 2015年製作。
当初は追悼特集として企画されたわけではなかったが、奇しくも公開2週間前に松本氏は亡くなってしまったので、結果的に追悼上映となった。
なお、当作品は全部で5部構成なのであるが、第5部は、1部から4部を松本氏に観せ それについて松本氏が語る形をとっているので、1~4部を鑑賞した観客に日をおいてから観てほしい という筒井監督のご意思で上映されなかった。

松本俊夫.jpg

作品の出来としては、可もあり不可もあり といったところだった。
先ず、可は----
一人の人物を扱ったドキュメンタリーにありがちな必要以上の神格化・偶像化がされていなかったことである。
松本氏が余りにもテレビ向けとはいえない芸術性の高い難解な記録テレビ映画を創った事諸々をきっかけに 三年半もの間 映像界から干され、道路工事や家庭教師など 映像とは全く関係のない仕事で食いつないでいた話、作品創りを巡っての意見の相違の末 氏が怒りのあまりスタッフの一人の首を絞めた話などが、カットされずにそのまま淡々と語られていた事である。
実に爽快である。
又、作品を通して 日本の映像界がどのような変遷をたどってきたかも詳らかに解かり、松本氏に興味のある人以外にも 日本映像史の勉強となるつくりとなっていたところも良かった。

そして不可は----
インタビュアーである筒井監督の声が小さすぎて、松本氏が何について 頷いたり首を傾げたり答えたりしているのかがとても解かり辛かったことである。
声を大きく出来なかったのならスーパーインポーズを入れれば良いのに と思った。
これはトークショー後の質疑応答の時間に全く同じ意見をぶつけていた観客が複数いたので、やはり私だけが感じた問題ではなかった様である。

松本俊夫.jpg
主観的な感想としては----
「1990年代以降は殆ど作品を創られていないが それは何故か?」という問いに対して、「大病をし、その後は体力が衰え 創作エネルギーも乏しくなってしまった。 エネルギーがない中で駄作を創るくらいなら創らないほうが良い」と答えられていて、私は如何にも妥協を許さない松本氏らしい英断だなと 好感を持った。
世の中には、一旦名が出ると どれほどの駄作であっても垂れ流すように創り続け、そうして創られた駄作をも称賛する盲目的ファンが少なくないが、私はそういった構図はいかがなものかと思うのだ。

又、第2部の拡張映画篇では、氏の拡張映画の代表作である「つぶれかかった右眼のために」の部分がインタビューの合間合間に繰り返し挿入され 面白い構成と成っていたが、「つぶれかかった---」のラストショットの後も第2部本編は続いていたので すっきりしなかった。
「つぶれかかった---」のラストを2部本編のラストにもってくればまとまりが良かったのに と思った。

が、全体的にはこの映画は創られて良かったと思える作品だった。
作品の解説のみならず、それまで知り得なかった松本氏の人柄や感情を充分に知ることが出来たのであるから。
そしてつくづく、松本俊夫氏ほど、幅広いジャンルに挑戦し クオリティの高い作品を生み出してきた映像作家は他にいないと 改めて思い知らされた。
日本に、松本俊夫という存在がなかったら、現在の日本の映像界はなかったと断言できる。
松本俊夫氏がこの世に誕生した事は、日本映像界の大きな幸だった。

松本俊夫.jpg

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コメント 32

花好き人

記録映画など見た事ないですがズシンと重いものを想像します
トークショーもあり充実した時間をすごされましたね
by 花好き人 (2017-05-20 06:14) 

green_blue_sky

重そうな作品。
追悼の意味がありますね。
作品時間が・・・驚き。
by green_blue_sky (2017-05-20 07:22) 

リンさん

偉大な方だったんですね。
公開二週間前に亡くなったなんて、残念です。
ご本人も会場にいらしたかもしれないのに。
by リンさん (2017-05-20 16:28) 

きよたん

松本俊夫氏 真摯な方だったんですね
苦労した時代もあって人間らしい一面を知ると
よけいに惹かれるものがあるでしょう
2日間に渡りインタビューも含め一連の映像作品を
観る機会はファンにとって感慨深いものだったでしょうね
by きよたん (2017-05-20 20:29) 

nikki

こういうの興味がありますが、作品時間がとても長いですね。

by nikki (2017-05-20 23:55) 

ぼんぼちぼちぼち

花好き人さん

実に充実した時間でやした。
松本先生の作られていた記録映画は、重いというよりアーティスティックな作風でやす。
「西陣」「石の詩」など、記録映画をこう撮るか!と初めて観た人は驚くと思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-21 09:55) 

ぼんぼちぼちぼち

green_blue_sky さん

決して重い作品ではなかったでやす。
逆に、場内大爆笑の場面も幾つもありやした。
松本氏が怒って首をしめた話のすぐ後に松本氏の顔が出た場面など。
時間は長かったけど、無駄な長さではなかったでやす。
観る方もエネルギーがいりやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-21 10:00) 

ぼんぼちぼちぼち

リンさんさん

へい、とても偉大な先生でやした。
映像の学校に通うと 松本先生の作品が必ずテキストとして扱われるので
映像の勉強をした人は誰もが知る先生でやす。
もしもお元気でいらしたらきっと、監督と松本先生の対談という形で登場されてたと思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-21 10:05) 

ぼんぼちぼちぼち

きよたんさん

へい、とても真摯な先生でやした。
仰るとおり、人間的な一面も垣間見ることができたことも非常に嬉しかったでやす。
予測通り観客の殆どは熱烈な松本俊夫ファンだったようで、感嘆の声をあげたり笑ったりするツボが一緒でやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-21 10:11) 

ぼんぼちぼちぼち

nikkiさん

へい、ほんとに長かったでやす。
精神面はわくわくなれど体力的に持つかなぁと不安だったんでやすが なんとか乗りきれやした。
公開された部屋は、劇場用の椅子の部屋ではなく、講義に使う部屋で 椅子が机の付いた折りたたみ式のクッションの薄いもので、この部屋はこの椅子であることが 以前あっしは講義を受けたときに体験して知ってたので 覚悟して臨み
しじゅう足を組みかえたり膝をかかえるようにしたりして保ちやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-21 10:23) 

ackylacky

「つぶれた~」を観てきました。
ゴーゴー、学生運動、金キロウ、オカマ、エロ、レースなどなど
子供のころに見た映像がちりばめられてました。
何かに似ていると思いましたが。ウルトラQやウルトラセブンのシーンに影響を与えていたのかもしれませんね。

ところで、この写真いいですね。部屋に飾りたいくらいです。
by ackylacky (2017-05-21 13:50) 

ぼんぼちぼちぼち

ackylacky さん

おぉ!ゆーちゅーぶで観ることができやしたか。
そう、60年代の文化・風俗・ニュースが詰め込まれてやすね。
元々この作品は、2スクリーンに3プロジェクターで映され、ラストはマグネシウムフラッシュがバッ!と光るという 型破りな形で上映されたそうでやす。

画像お誉めくださり光栄でやす。
あっし自身気に入っている色合いなので とても嬉しいでやす。
スクリーンの長方形のイメージでこの画像にしやした。
この画像は、随分前の記事「映画的おわりかた・落語的おわりかた」で使ったものをpcでネガ加工したものなんでやすf(◎o◎)
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-21 14:32) 

そらへい

記事を拝見していると
気骨のある方だったことが伝わって来ます。
by そらへい (2017-05-21 20:28) 

ぼんぼちぼちぼち

そらへいさん

仰るとおり、とても気骨のあるかただったのが 本作品を通してもよく解かりやした。
時に一緒に仕事をする人は大変だったかも知れやせんが、
映画ファンとしては、これくらい商業に迎合しない作品創りをする監督が存在していたことをとても嬉しく思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-21 21:28) 

伊閣蝶

「大病をし、その後は体力が衰え 創作エネルギーも乏しくなってしまった。 エネルギーがない中で駄作を創るくらいなら創らないほうが良い」
如何にも松本監督らしいお言葉に深く感じ入りました。
創造者の最も恥ずべき退廃は自己模倣だといいます。
創作エネルギーが枯渇している現実を直視できずに、以前に自分の作った作品の肯定的評価を追い求めて堂々巡りに陥る。
しかし、仰る通り、そういう駄作を受け入れる貧困な観客がいたりするので、そうした似非芸術家が跋扈するのでしょう。
私もそういう人にたくさん出会いましたので、とりわけ松本監督の孤高の世界に感動します。
重ね重ね惜しい芸術家を失ってしまいました。
by 伊閣蝶 (2017-05-21 23:42) 

なかちゃん

539分っていうと、9時間半以上…ちょっとボクには無理かもしれません ^^;
『駄作を創るくらいなら創らない方が良い』は、教官出来ますね(^^)

by なかちゃん (2017-05-22 10:18) 

馬爺

テレビや映画はほとんど見ないので作品自体も分かりませんが監督の心意気が感じられる作品のようですね。
by 馬爺 (2017-05-22 13:08) 

mimimomo

こんにちは^^
映画ばかりでなく、世の中にいったん名が売れると駄作でも垂れ流す人・・・それを称賛する人いますね。見苦しいです。
by mimimomo (2017-05-22 15:17) 

クッキー

539分の作品とは、撮ったのはこれ以上ですから、編集の苦労が
わかるような気がします。
by クッキー (2017-05-22 16:12) 

旅爺さん

もう3日連続で30度越の暑さですね。
外に居たので手が焼けてヒリヒリですが明日も暑いそうですね。
by 旅爺さん (2017-05-22 17:46) 

rappi

539分とは大作ですね。
私は3時間半が視聴の限界です。^^;
・・・創らない方が良い、プロの言葉だなと思います。

by rappi (2017-05-22 21:57) 

美美

映画界のことはまったくわかりませんが
二日間に渡ってもファンの方たちにとっては魅力のあるものだったんでしょうね。

by 美美 (2017-05-22 22:08) 

rannyan

わたしはぼんぼちさんの記事を通して、松本俊夫氏を知ったのですが
これだけのものが亡くなる前に作られるだけの人なのだなぁと改めて思います
図らずも追悼の形にはなってしまったけれど..
第5部は、これから上映なのですね? ご本人は何を語るのでしょう..
by rannyan (2017-05-22 22:29) 

ぼんぼちぼちぼち

伊閣蝶 さん

自己模倣をしてしまう作家、いやすね。表現者として恥ずべき作品づくりでやすね。
引き際というのは大事だと思いやす。
勇気の必要とされることだと思いやす。
「創らない」という英断をされた松本氏は、最期まで真の表現者だったと改めて感じやす(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-22 22:38) 

ぼんぼちぼちぼち

なかちゃんさん

長かったでやす~
決して編集下手で無駄に長かったわけではなく、全て必要な充実の内容の長さではありやしたが
観る側にも非常にエネルギーが求められやした。
初日の一部と二部の間には「長尺の作品にお運びくださりありがとうございます」と 劇場側からのお茶のサービスもありやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-22 22:47) 

ぼんぼちぼちぼち

馬爺 さん

筒井監督、松本氏に陶酔することなく良いも悪いも淡々と追っているところがとても好感持てやした。
でありながらも、尺にも表れているように非常にエネルギーを感じる仕上がりでやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-22 22:54) 

ぼんぼちぼちぼち

mimimomo さん

いやすよね~
あっしはそういうファン心理はまったく理解ができやせん(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-22 22:59) 

ぼんぼちぼちぼち

クッキーさん

あっしもそう思いやす。編集の作業、大変だったでやしょうね。
当初は松本氏へのインタビュー篇と関係のかたへのインタビュー篇とに分ける計画だったのだそうでやすが
同じことについて 松本氏が語ってすぐに関係のかたが語るシーンが出たほうが面白い との理由から、このような構成にされたそうでやす。
正解だったと思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-23 11:45) 

ぼんぼちぼちぼち

旅爺さん

ほんとに暑いでやすね~(◎o◎:
まだ暑さになれてない時期だから すごくバテやすね。
昨夜、慌てて真夏用の服をひっぱり出しやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-23 11:48) 

ぼんぼちぼちぼち

rappi さん

ふつう長尺の劇映画でも途中で休憩が入って3時間半くらいでやすもんね。
創らないという選択をされた松本先生、あっしはますますファンになりやした(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-23 11:54) 

ぼんぼちぼちぼち

美美 さん

へい、仰るとおり、魅力に溢れた2日間でやした。
松本先生のお姿は、作品解説の映像や映像理論の講義で知ってはいても
昔話を気さくに話されてるお姿はそれまで観ることはなかったので
嬉しかったでやす。
監督も仰ってやしたが、決して気難しいお人柄ではなかったようでやす(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-23 12:05) 

ぼんぼちぼちぼち

rannyan さん

そうでやすね。日本の映像界を語る上で欠くことのできない 理論的で先駆的なことを次々と試みられた偉大な映像作家でやす。
こういった作品が創られるに相応しいかただったと思いやす。
第5部、とても気になってやす。
まぁ、そう遠くない将来 上映されることと思うので、その日が来るのを楽しみにしてやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-23 12:14) 

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