So-net無料ブログ作成

 映画「薔薇の葬列」  [感想文]

薔薇の葬列.jpg

日本を代表する映像作家・松本俊夫氏の処女劇映画作品であり、氏の映画に対する思念が極めて明確に浮き彫られている 1969年の渾身作である。

ゲイバーに於けるママの座争奪戦が、時代が大きく変革しようとしていた60年代後半の風俗や新宿の街を背景に、オイディプス王の物語を下敷きとして おどろおどろしくかつユーモラスに、松本氏独自の強烈な映像感覚によって テムポよく展開する。
ハイコントラスト 吹き出し コマ落とし・・・・従来の劇映画にはみられない手法がふんだんに盛り込まれている。

それだけには終わらない。
この作品は、「劇映画」という枠組み自体を越境した創りと成っているのだ。
劇映画としてのストーリーが途中まですすむと、突如 主役であるピーターのこの役を演ずるにあたっての思いが語られ、再び劇が展開し、する内 二丁目をゆくゲイボーイに何故ゲイボーイになったのかを尋ねるインタビューが挿入され、再び・・・・といった、つまり ドキュメンタリーを入れこにした劇映画なのである。

松本氏は、「つぶれかかった右眼のために」で、同時多発的に様々な現象の勃発した60年代を 2スクリーン3プロジェクター使用という ドキュメンタリーの規格外で以ってアーティスティックに焼きつけ、その後のドグラマグラでは、あえてつじつまの合わないシークエンスをつなぎ合わせることで 狂人かも知れぬ主人公の混乱を、物語の外側面からも表現している。

こういった、本来の映画ジャンルの約束事を取っ払ってしまう事によって、約束事内だけで創っていては伝達不可能な意思を 見事に観客の心理の奥深くに刻みつけてしまう・・・・・これこそが、松本俊夫氏の真骨頂であり、氏が日本の映像作家の第一人者と呼ばれる所以である。

薔薇の葬列.jpg


タグ:薔薇の葬列
nice!(296)  コメント(18)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 296

コメント 18

johncomeback

この映画は知りませんでしたが、
是非観てみたいと思いました。
by johncomeback (2015-07-09 13:07) 

ぼんぼちぼちぼち

johncomeback さん

DVDになっているので機会があったら観てみられてくださいでやす(◎o◎)/
アート・実験系映画に興味のあるかた、60年代の新宿に興味のあるかた、ゲイボーイに興味のあるかたは、特に楽しめると思いやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-09 20:36) 

向日葵

嗚呼!!

やっぱり見たいです!!
公開当時、とてもとても見たかったのですがー!

何故か機会が無く、今まで一度も見たことがありません。

「なんとなく」知っていただけでしたし、ピーターも
「まあ、好きだし」位の「見たい」でしたが、
ぼんぼちさんのレポを伺って、これは「見なくちゃ!」
に一気に変わりました!!
by 向日葵 (2015-07-10 02:23) 

ぼんぼちぼちぼち

向日葵さん

向日葵さんはこの作品を公開時からご存じだったのでやすね!
あっしはリアルタイムでは知らなかったので、当時どのくらい話題になったのか すごく気になりやす。
DVDになっているので、観てみられてくださいでやす。
新宿のツタヤにあるかな・・・・?
by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-10 11:08) 

オカジュン765

こんばんは。まいど訪問おおきにです。
こういう社会派の映画は観たことがありません。いつも娯楽に走ってしまうお調子者です。一度後学のために観ておくのも必要かも。
このたびは亡父の永眠に際しまして、お心のこもったお悔やみを賜り、心より御礼申し上げます。

by オカジュン765 (2015-07-10 21:43) 

lequiche

ジョナス・メカスとか、唐突に出てくる固有名詞が難解ですよね。
あと、「我が生まれし日 亡びうせよ」とか。ヨブ記ですね。
そういう些末なところっきり覚えてないですけど、
ゲイバーだって今みたいな市民権は得ていないはずですし、
当時は今よりも、もっと実験的な意味合いが強かったのでは、
と想像できます。
by lequiche (2015-07-11 01:40) 

きよたん

松本俊夫という名前 懐かしい響き
でもこの監督の映画 観たことはなかったような。
アートシアターやイメージフォーラムにはよく行きました。

by きよたん (2015-07-11 07:37) 

そらへい

かなり実験的意欲的な映像のようですね。
若い頃だと、面白く感じたかも
今は、ちょっとついて行けない自分を見つけます。
映像だけではなく書籍でも読む本がどんどん保守化してます(笑)
by そらへい (2015-07-11 09:45) 

ぼんぼちぼちぼち

オカジュン765さん

もしもお気が向かれたら観られてみてくださいでやす。
お父上も、オカジュンさんのような息子さんを持って誇りに思われていたことと思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-11 10:34) 

ぼんぼちぼちぼち

lequiche さん

ヒッピーとラリったり創作映像を観たり・・・という件りをよく憶えておられるのでやすね。
そう、今はニューハーフのかたが普通に昼間からテレビに出ておられたりする時代になりやしたが
当時の世間の目はかなり違ったようでやすね。
松本先生ご自身も、この作品の解説で仰ってやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-11 10:39) 

ぼんぼちぼちぼち

きよたんさん

松本先生は短編のほうが知られているのかも知れやせんが、
劇映画も4本撮られていて、この作品の他には
「ドグラマグラ」 「修羅」 「十六歳の戦争」がありやす。
イメージフォーラム、貴重な作品を映るいい劇場でやすね。
あっしは世界実験映画史は、ここの講習会で学びやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-11 10:45) 

ぼんぼちぼちぼち

そらへいさん

年齢とともに保守的になるかた多いようでやすね。
衝撃や新鮮さよりも安心・安らぎを求めるようになるからかな?

by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-11 10:51) 

ふゆん

ゲイバーのママの座争奪戦!すごくはげしそうー!
ママって頭よいイメージだから
頭脳戦ちっくになるのかなあ(・∀・`)
by ふゆん (2015-07-12 05:13) 

ぼんぼちぼちぼち

ふゆんさん

争奪戦、すごくはげしく描かれてやしたよ。
陰湿な頭脳戦もあり、コミカルな殴りあいもありでやした。

作品の性質上 ほんもののゲイボーイのかたがたが出演され演じられてたんでやすが
ほんとに美しいかたがおられやした(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-12 10:13) 

伊閣蝶

薔薇の葬列はすごい映画でしたね。
この映像作品、たとえば美術が朝倉摂、音楽が湯浅譲二、といった、当代の先鋭的な芸術家が参加していて、しかも、撮影は名手鈴木達夫。
そういえば、ドイクラ・マグラの音楽は三宅榛名でした。
こういう人たちが自然と集まって作品が成り立っていくという、実に刺激的かつ幸福な創造であったと思います。
そして、それは当然に観る者にも大きな感動を与えたのでしょう。
近年、こうした試みがほとんど見られないことに、いささか残念な気持ちを禁じえません。
by 伊閣蝶 (2015-07-18 17:04) 

ぼんぼちぼちぼち

伊閣蝶 さん

この作品の感想は、ブログを始めた当初から「必ず書きたい!」と思い続けてやした。
あまりにも思いが強すぎて どうまとめていいかかなり長い間逡巡してやした。
で、一人でも多くのかたに知ってほしい作品だから、いっそぎゅぎゅっと短く簡潔に 最も言いたいことだけを書こう と。
結果、美術・音楽の素晴らしい顔ぶれについては割愛してしまいやした。
なので、こうしてコメントでそのあたりのことを触れてくださってよかったでやす。 ありがとうございやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-18 20:59) 

ちゅんちゅんちゅん

おはようございます!
タイトルから想像する「耽美」作品ではないのですね
探して観てみます(^^)
by ちゅんちゅんちゅん (2015-07-21 07:40) 

ぼんぼちぼちぼち

ちゅんちゅんちゅんさん

へい、耽美・・・・ではないでやすね。
おどろおどろしく衝撃的かつユーモラス、といったところでやしょうか。
厳選された商品を揃えているレンタル屋さんか大きなツタヤにはあるかも・・・・知れやせん(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-07-21 11:47) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0